【婚活サプリ】結婚って本当に必要? 〜 山内マリコ『あのこは貴族』 〜

アラサーの独身女性のなかには結婚に対して、迷いや葛藤を抱えている人が多いのではないでしょうか。結婚するための努力、いわゆる婚活に悩んだり疲れたりしたとき、自分を励ましてくれるのは友だちや家族だけではありません。恋愛や結婚をテーマにした本や映像のなかには「婚活サプリ」をもいえる作品があります。

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主人公はふたりの女

今回紹介する「婚活サプリ」は、山内マリコさんの小説『あのこは貴族』です。Webメディア「cakes」での連載を編纂したもので、先月発売されたばかりの新刊。

連載中から多くの女性の共感と人気を集め、満を持しての書籍化です。公式サイトには先日急逝された『女子をこじらせて』の作者・雨宮まみさんもレビューを寄せています。

決まった階級やグループの中で、人に羨ましがられるような立場に立つとか、いい男と結婚するとか、そういうゲームの中でも人は普通に傷つくし、なにも感じないはずがない。感情や心が求めているものを無視しすぎると、空虚な毎日が待っている。そのことを登場する女たちは自分で悟っていく。そして階級や、ステイタスを持っている男を追いかけることではなく、自分で自分を肯定できる世界へと向かってゆく。

引用元:集英社文芸単行本公式サイトRENZABURO『あのこは貴族』特設ページ

この雨宮まみさんのコメントの通り、この小説から伝わってくるのは自分らしい自分でいることがいかに心地のいいことか、自分のことをよくわからないうちに手に入れたかたちだけの幸せがどれだけ窮屈なものか、ということ。

結婚について迷ったり婚活に疲れてしまったりしたとき、一瞬立ち止まって「自分らしい幸せのかたちってなんだろう」と考え直すことができます。

<STORY>

東京の裕福な家庭で生まれ育った華子は、27歳の誕生日を目前に結婚を考えていた彼氏にフラレてしまう。女は結婚するのが当たり前という価値観のなかで生きてきた華子にとってそれはとても悲劇的なことだった。落ち込む彼女を見かねた家族や友だちがお見合いやブラインドデートをセッティングするなか、華子は外見も中身もそして肩書も理想的な男性、幸一郎と出会う。トントン拍子に婚約した幸一郎と華子。なにもかも幸福に思えたが、華子にとって気がかりだったのが幸一郎の携帯に表示された美紀という女性の名前だった。

美紀は、幸一郎の大学の同級生。といっても学生時代に交流はなく、美紀が自主退学後に働いていたラウンジで出会ったのがきっかけで親しくなった。友だち以上恋人未満のような関係をズルズル続けているし、美紀は幸一郎をたぶん好きだと思っているが、自分のような庶民の女を選ばないのもよくわかっている。

ひとりの男をとりまく境遇のまったく異なるふたりの女が、ある偶然によって対面することになる。

結婚って本当に必要?

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この小説ははじめ、華子視点と美紀視点で物語が語られます。共通しているのは幸一郎という男。

ふたりの女の境遇はまったく違うけれど、お互いいまの自分になんとなく違和感を感じているのは共通しています。このままでいいのか、自分は本当に正しい場所に向かっているんだろうか。そんな葛藤は現実世界で生きている女性も抱えているものなのではないでしょうか。

そんなふたりが偶然の連鎖でいよいよ出会ったとき、よくある展開はお互いを罵り合うケンカが起こること。でも『あのこは貴族』のなかに、マウンティングや女同士のいさかいは登場しません。

それどころか、お互い生まれ育った環境や価値観がまったく違う女と出会うことで、自分と素直に向き合うことができるようになるんです。

この小説は、結婚や恋愛を切り口にしていますが、そこから伝わってくるのは自分らしさを探してもがくことの大切さ、そして幸せとはなにかということ。

読み終わったあとにはきっと「結婚って自分にとって本当に今すぐ必要なこと?」という問いかけが生まれているはず。婚活を続けるにせよ、いったん休憩するにせよ、一度立ち止まって考えてみることで、前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。

『あのこは貴族』
著者:山内マリコ
出版社:集英社
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