丼ぶりの中のバレンタイン

実はチョコレート×ラーメンの融合は今に始まったことではなく、例えば新宿の有名ラーメン店『麺屋武蔵』では2009年からお菓子メーカーロッテとコラボして、毎年バレンタイン時期にチョコ入りラーメン(つけ麺)を期間限定発売している。 チョコレート×ラーメンというジャンルは、もはや確立されつつあるのだ。

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バレンタインデーの悪口は、やめにしよう。
こんなものは、お菓子メーカーの陰謀だ!
本音と建前が奔流する、醜悪な社会風習だ!
没個性が引き起こす、女子力の定期検診だ……!
等々、わけのわからないプラカードを持ってデパートのチョコ売り場をうろつくのは、もうやめにしよう。
なぜなら、チョコにはなんの責任もないのだから。バレンタインデーへの思いはそれぞれにあれど、チョコはいつだってみんなに美味しいじゃないか。
だから私は今後、バレンタインデーから一切の文化、風習を切り離して、2月14日という日を“チョコを再発見する日”だと位置付けることにした。
そう思えば、バレンタインはチョコに取り、純粋な晴れのイベントとなるのだ。


さて、新たな気持ちでチョコを見つめるにあたり、今回皆さんにご紹介するのは、“チョコレート入りのラーメン”である。……そんな顔しなさんな。
実はチョコレート×ラーメンの融合は今に始まったことではなく、例えば新宿の有名ラーメン店『麺屋武蔵』では2009年からお菓子メーカーロッテとコラボして、毎年バレンタイン時期にチョコ入りラーメン(つけ麺)を期間限定発売している。
もしチョコとラーメンの組み合わせがあなたの想像するようにゲ○不味ならば、そんなものが何年も続くはずがない。ガーナの人も黙っちゃいない。つまりチョコレート×ラーメンというジャンルは、もはや確立されつつあるのだ。

そして、今回紹介するのは丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩約5分ほどの場所にある『麺や庄の gotsubo』というお店の「チョコブラック2017」。
こちらの『麺や庄の gotsubo』というお店は、店名にある通り5坪ほどの小さな店構えの人気店で、カウンター6席のみの落ち着いた空間は、どこかオシャレなカレー屋さんのような雰囲気がある。ラーメン屋をカレー屋で例えるのは実際どうかしているが、とにかくオシャレで清潔で、女性一人でも入りやすいのだ。

そんな『麺や庄の gotsubo』がバレンタインに提供する「チョコブラック2017」は、チョコ入りラーメンにも関わらず、カレーよろしく大変スパイシーな仕上がりになっている。


まずはその見た目に驚く。黒々としたスープと、それを覆い尽くすような燻製チャーシュー。そして高級食材九条葱に、大粒の黒胡椒。それらの頂に鎮座するチョコレート。


勘のいい人ならば気づいたかもしれないが、名前のブラックというのは、富山ブラックラーメンをモチーフにしていることからきている。富山ブラックラーメンとは、濃いめの醤油スープに粗挽き胡椒、葱などが散らされたパンチの効いたラーメンで、本来チョコとは違う厨房にいるラーメンだ。
しかし二つを合わせたこちらのラーメン、結論から言うと……媚びてない。
このラーメン、バレンタインにチョコ入りラーメンをイベント的に食べに来た世の中の激甘カップルたちに対して、微塵も媚びていないのだ。
濃い……なんて濃いスープなんだ。

恋スープとか言いそうになったが、言ってらんない濃さだ。そしてその上に散らされた大量の黒胡椒は、舌がピリつくほどにスパイシーで、ヒーヒー言いながらも箸が休まることはない。丼の周壁に張り巡らされた燻製チャーシューは香ばしい香りによってスープに屈することなく、そのボリュームは、今年もお母さんにしかチョコをもらえなかった柔道部少年の腹をもきっと満たしてくれるだろう。
さあそんななか、我らのチョコはなにをしているのか。
なんとチョコは、スープをより濃くするのに手を貸していやがった……!
つまりチョコは、このブラックラーメンを完成させるために、葱や胡椒とともに、全体に奉仕していたのだ。そのため、当然チョコには全く甘さがない。むしろほろ苦いコクを感じる。でも、それでいいのだ。だって私たちが、チョコは甘いだけじゃないんだってことに気づいたのも、バレンタインのあの日だったじゃないか。

かくして、この一杯を食べ終わる頃には、それがバレンタインデーであったことなどどうでもよくなっているかもしれない。残るのは、上手いブラックラーメンを食べたということと、チョコを丼のなかに再発見したという、小さな喜びである。
なお、今回紹介した「チョコブラック2017」は「『麺や庄の gotsubo』の他、MENSHOグループの各店でも食べることができる。
2017年のバレンタイン、今年は是非チョコ入りラーメンを食べて、もし誰かに「今年チョコどうした?」と聞かれたら、「あー、ラーメンと一緒に食べたよ」とちぐはぐな答えを返してみよう。