[LIFE名鑑 #movie]全力で表現する人間の、美しさと脆さ 〜『ザ・ダンサー』6月3日公開〜

ダンスは好きですか? 私はある大学で芸術系の学問を専攻しながら、当時はダンサーでもありまして卒論も、当時所属していたカンパニーのメソッドを書いたものでした。今回ご紹介するのは映画『ザ・ダンサー』。実話がベースになっており、主人公は一世を風靡したダンサーのロイ・フラー。彼女の自然体で個性的なダンスに、目を奪われること間違いなしです!

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スターへの階段を駆け上がっていくロイ

舞台は19世紀末のパリ。印象派やキュビズムなど新しいアートが一気に花開き、ヨーロッパ中が豊かな文化の香りに酔いしれていた時代です。そんな時代に、世界にひとつのダンスで熱狂を巻き起こしたダンサーがいました。それがロイ・フラーです。

女優になることを夢見てアメリカの農家で生まれ育ったマリー=ルイーズ・フラーは、ニューヨークでのオーディションを受け続ける中で偶然舞台で踊ったことで、初めて喝采を浴びます。その日から “ロイ・フラー”と名乗りバレエの殿堂、パリ・オペラ座で踊る夢を叶えるためにパリへ。情熱と信念だけで舞台に立ったロイの舞台に観客は歓喜し、ロイは一夜にしてスターとなります。遂にパリ・オペラ座から出演オファーが舞い込むロイは、才能溢れるイサドラ・ダンカンを共演者に抜擢し、彼女への羨望と嫉妬、肩の痛みに苦しみながら夢に向かって進むのです。

▼森の中でダンサーたちと踊るロイ
© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM

話題の人、リリー=ローズ・デップも出演

イサドラ・ダンカンは、教科書的にはモダン・ダンスの祖と言われているダンサー。彼女の役を、なんとジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップが演じているのです。サラブレッドである彼女のこと、きっと幼い頃からバレエ等を嗜んでいたのでしょうね。劇中で披露するダンスがとても上手。そしてもちろん、美しい。

▼ロイの嫉妬と憧れを集めるイサドラ・ダンカンをリリー=ローズ・デップが演じる
© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM

しかし今回私が最も感動したのは彼女ではなく、主役を務めるSOKOの演技。ボーイッシュかつ黒い髪と瞳のせいか日本人になじみやすいルックスをしている彼女は、シンガーとしても実力派。そしてその存在感は、圧巻です。

監督が興味をそそられた、ふたりのダンサーの不公平

リリー=ローズ・デップについて監督は「彼女はまだ16歳なのにとても堂々としていて、信じられないほど身体を自由自在に操れる。ソーコが何週間もトレーニングをしなければならなかったのに対して、リリー=ローズはすぐに役に入りこめた」と話しています。

そして、「イサドラ・ダンカンはロイにないものを全て体現していた。それは、若さ、才能、優雅さよ。彼女こそ“ザ・ダンサー”だわ。イサドラは、ただ会場に現れるだけでよかった。その一方でロイは、一生懸命努力を重ねて、たくさんの技術に頼らなければならなかった。私は、こうした不公平に興味をそそられた。それは、私たちみんながいつも自分自身の限界に直面しているからよ」とも。
そう、ロイは、努力のひとなのです。「表現者はみんな、天性の才能がある天才」と思いがちですがロイは違う。もちろん神様からのギフトは手にしているのだけれど、そのギフトとは「諦めない」という強い気持ち。皆さんも仕事や日常で、自分自身の限界に直面している場面もあるのでは? そんな時に勇気と希望を与えてくれる作品なのです。

そして、以前ご紹介した『たかが世界の終わり』に主演しているイケメン、ギャスパー・ウリエルが、ロイに欠かすことができない人物を演じているのもみどころのひとつですよ。

ペール・ラシェーズ墓地

▼パリ20区にある、ペール・ラシェーズ墓地

わたしは2015年の8月にパリを一人旅しました。パリ20区にあるペール・ラシェーズ墓地があり、パリに住む友人が案内してくれました。ショパンやエディット・ピアフ、ジム・モリソンなどの多くのアーティストが眠る墓地として人気観光地のひとつになっています。

▼美しい壁に埋め込まれている、イサドラ・ダンカンの墓

そこで、きれいにされているイサドラ・ダンカンの墓から数百メートルしか離れていない場所に、草に覆われているロイの墓があります。「イサドラの墓はとてもきれいにされている。ここでも不平等が続いているわね」と監督は話しているのです。

ザ・ダンサー
第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品/第42回セザール賞6部門ノミネート
■監督:第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品/第42回セザール賞6部門ノミネート
■CAST:ソーコ(「博士と私の危険な関係」)、リリー=ローズ・デップ(「Mr.タスク」)、ギャスパー・ウリエル(「たかが世界の終わり」)
■原題:La Danseuse/2016年/フランス・ベルギー/仏語・英語/108分
■6月3日、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
■配給:配給:コムストック・グループ/配給協力:キノフィルムズ/

■公式サイト: http://www.thedancer.jp/