こんな作品知ってた?ディズニー名作映画、再発見!①~ヘラクレス~

「アナ雪」、「ズートピア」、「モアナ」など近年はメガヒットが続くディズニー映画。実は見たことがなかったり聞いたことがなかった作品でも今見れば味わい深い魅力が隠れています。そうした作品があったからこそ今のディズニーがあるといってもいいのかも。

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ディズニー流サクセスストーリー


リトルマーメイドやアラジン、ライオンキングが続いた黄金時代と、ピクサーが台頭した間の時代の作品。この時代の作品たちは軒並み興行収入が思うほど振るわなかったものの、渋いテーマや作風がいまだに評価されています。

この作品は、ギリシャ神話をディズニーらしくアレンジ。青年ヘラクレスがヴィランである死の神ハデスによって仕掛けられた困難を克服するサクセスストーリーです。こうした神話の読み替えは随所に見ることができ、具体的にはアメリカンカルチャーのモチーフによって彩られます。例えば、ヘラクレスが修行するシーンはアメリカンのスポーツやワークアウトになぞらえていたり、怪物退治に成功してステップアップしていく様子はアメリカ流の成功者(ナイキとコラボしたり、リッチ御用達のクレジットカードに顔がプリントされたり!)のイメージとして演出されます。そして物語のフィナーレには、こうしたありきたりな成功者から一皮むけた(肉体的にも、精神的にも)いい男へと成長するのです。確かに主人公ヘラクラスを中心にこの作品を見れば、アメリカンドリームの成就をギリシア神話を借りてやってのけたとみることもできますが、おススメしたい魅力は別のところにあります。

一度は恋に破れたヒロイン・メガラが翻弄される等身大の悩み


本作で最大の魅力を放つのは、ヒロインであるメガラ。それまでのディズニープリンセスとは異なる出自と性格をもち、それ故の魅力が私たちの心を掴みます。彼女はかつて好きだった男性に裏切られた過去があり心に傷があり、その過去からハデスに協力するように。
ハデスは、彼の目の上のこぶであるヘラクレスを片付けるためにメガラを差し向けます。田舎から出てきた純朴な少年であるヘラクレスをたぶらかして破滅させることは、メガラからすればたやすい仕事。すでにヤケになっている彼女にはそんな男は魅力的には映らないはずです。実際いとも簡単にヘラクレスを手玉に取ります。それもそのはずで、ディズニープリンセスには珍しい、セクシーな大人の女性の魅力を感じるいでたちのメガラ。しかし、私たちにとってみれば、お姫様のように可愛く着飾らざないそのセンスはむしろ等身大とさえ言えるのではないでしょうか。しかしただセクシーなだけでヘラクレスをたぶらかすセイレーンのような役割で終わらないからこそ、この物語は面白くなっていきます。

実は一目見たときから関心を寄せていながら、会えばさらにヘラクレスに徐々に惹かれていく彼女。劇中版、自分では気づかぬふりをしているつもりの恋心を切実に歌い上げる”I won’t say I’m in Love”はディズニーソングの中でも名曲のひとつです。日本語吹き替え版では工藤静香さんが歌いあげました。

男に騙された傷がいえないメガラ。しかし、徐々に過酷さをます試練へ身を投じるヘラクレスを目の当たりにして、自分の気持ちと向き合うことを迫られます。その揺れ動きがその後の物語を大きく盛り上げていきます。

ゴスペル調ミュージカルソングが世界観を作る


神話を題材に、現代的なロマンチックストーリーを作り上げる本作のその世界観を統一するのは、キャラクターたちではなくむしろ音楽です。ミュージカル「ドリームガールズ」をご存知の方ならすぐに想像がつく、ムーサと呼ばれる歌手たちが歌うゴスペル調のミュージカルソングたちが物語を導きます。こうしたムーサの役割は、ギリシア古典文学に出てくる物語の語り部であるコロスの役割を引き継ぐ、ある意味では正当な登場人物たちといえるでしょう。
彼女たちが、主軸としてのアメリカン・サクセスストーリーと、メガラのエモーショナルな恋物語をつないでくれます。そうして、ギリシア神話というかつてあったような昔話を、ミュージカルの世界へ引き込み、一つの世界観として新たに見せてくれるのです。
“The Gospel Truth”から始まり”Zero to Hero”、メガラと歌う”I won’t say I’m in Love”、エンドクレジットで流れる”A star is born”にかけて名曲が続き、ミュージカル的世界観をぞんぶんに見せてくれます。

実は公開直後はディズニーランドの昼のパレードでフューチャーされたり、続編アニメーションシリーズが制作されていたりと決して不人気ではないヘラクレス。メガラの魅力と音楽を楽しめばお気に入りの一作になるはず。

ヘラクレス
■制作年
1997年
■監督・脚本
ジョン・マスカ/ロン・クレメンツ
■音楽
アラン・メンケン
■上映時間
97分