妻であり母であるフラメンコダンサーのほとばしる情熱 〜映画『パッション・フラメンコ』〜

フラメンコ界を牽引する現代最高のフラメンコダンサー、サラ・バラスを描いたドキュメンタリー。伝説と言われる舞台『ボセス フラメンコの組曲』の初演までの3週間を追っています。ボセスとはスペイン語で“声”という意味。尊敬するスペインの6名の偉人たちに捧げるサラ・バラスの「声」が、踊りとして表現されている舞台です。

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情熱を感じるフラメンコ

舞台で放つ、圧倒的な存在感 © 2016 NADIE ES PERFECTO BLINDSPOT all right reserved.

残念ながらわたしは、生のフラメンコの舞台を観たことがありません。フラメンコと聞いて思い出すのは、幼稚園の頃、お遊戯会としてフラメンコのような踊りを踊った記憶。(今考えるとなんとも前衛的なチョイス)そして、昨今の習い事としてのダンスブームで、フラメンコの教室に通っていう友人を思い出す程度。しかしサラ・バラスの踊りを観て、俄然フラメンコへの興味がわきました。

スペインの踊りであるフラメンコは、今回の映画のタイトルになっている通り、とにかく情熱的。それはサラ・バラスのインタビューや稽古風景が裏付けています。インタビューで彼女は、印象的な言葉をいくつか残しています。女性、中でも特に好きなことをしながら働く母親はとても共感するのでは!と思います。そんな彼女の言葉をいくつかご紹介します。

印象的なことばの数々

仕事に対する厳しい顔とは異なる、キュートな素顔 © 2016 NADIE ES PERFECTO BLINDSPOT all right reserved.

犠牲や苦労があるから劇場を満員にできるのよ。汗を流さずにソレアを踊れると思う?

ソレアとはスペイン語で「悲しみ」や「孤独」を表す、フラメンコの曲の1種。フラメンコで表現される情熱は、ポジティブな感情だけではありません。犠牲や苦労とは単に厳しい肉体的な訓練だけではなく、人生経験における内面的な深さや重さも表しています。

小さいころフラメンコダンサーの水玉衣装に憧れた。今なら、どんな水玉でも着こなせる。舞台でも、日常生活でも。

年齢を重ねてキャリアを積んでいくことを、こんなにもチャーミングに表現することができるなんて!と感激した言葉です。サラ・バラスは、もちろん言葉通りに、水玉衣装を着こなせるようになったのでしょう。働く女性のロールモデルが見つけにくい日本で、こんな風に言える女性たちが増えてくるといいなと思います。

この仕事で最もつらいことは何か。子供を残してくることよ。

サラ・バラスには小さな男の子がいます。稽古やツアーの合間に見せる母親としての顔に、人間的な魅力を感じました。これは、全てのワーキングマザーに捧げたい言葉。そのつらさを乗り越えて最高のパフォーマンスをみせる。ここにも彼女のプロ意識が宿っています。

この他、「パリはフラメンコが好き」というちょっと意外な言葉や、「NYに来ると無名の自分になれる」そして「東京は驚きの連続だった」など、世界を飛び回る売れっ子ダンサーならではの言葉も。旅好きのわたしとしては共感しきりでした。

作品作りを支えるパートナー

パートナーであるホセ・セラーノとの関係に憧れます © 2016 NADIE ES PERFECTO BLINDSPOT all right reserved.

そしてもうひとつ、このドキュメンタリー作品に深みを与えているのが、公私共にパートナーであるダンサーのホセ・セラーノとの関係。ともに舞踊団を率い、ともにクリエイションを生み出す、そのパートナーシップがうらやましくなるほど自然で、とっても素敵なんです。舞踊団のメンバーに家族のように(もちろんときには厳しく)接する彼らの、人間的な豊かさを感じました。

スペインに行きたくなる一作

水玉衣装がお似合い! © 2016 NADIE ES PERFECTO BLINDSPOT all right reserved.

このドキュメンタリー作品を観てフラメンコへの興味がわいたわたしは、スペインはマドリードに住む、友人のフラメンコ好きのセルヒオに「フラメンコのどんなところが好き?」と尋ねてみました。

彼はまずわたしに「映画やテレビじゃなくて、ライブで観なきゃだめだ!」とアドバイス。映画やテレビからは感じられないもの、それはエネルギーだそうです。動きがとてもパワフルで、汗もたくさんかくし(そういえば、バレエや日本舞踊は汗をかいて踊るという印象はないですよね)、生演奏も非常に重要。表現される情熱も、悲劇や挑戦、愛(セクシャルな愛を含む)など、人間の本質が源となっている、それを生で感じなきゃだめだ、と。古典ドラマのようなもののようで、そのためスペインでは今は若いひとはあまりフラメンコに興味がないよう。でもまぁそれはどこの国の伝統芸能も同じだよね、歳をとるとその良さに気付くんだよね、と話していました。

そして最後に、スペインで本場のフラメンコを観るのにおすすめのお店を教えてもらいました。
▼casapatas

実はわたしは、スペインにはまだ行ったことがありません。フラメンコを観に、今年まだとっていない休暇でスペインに……!と夢が膨らみます。皆さんも、スペインに限らず日本でも、良質なフラメンコを観る機会があれば、どうぞお見逃しなく!!

パッション フラメンコ
■監督・脚本
ファ・モレス/ぺぺ・アンドレウ
■キャスト
サラ・バラス/ティム・リース ほか
■上映時間
96分
■配給
アルバトロス・フィルム
■劇場公開情報
2017年8月19日(土) Bunkamuraル・シネマ ほか全国順次公開

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