僕を惑わす、働く女性-新宿駅のシュークリーム屋さん-

ちょうど一年くらい前だったか、シュークリーム屋の店員さんに惑わされた。新宿にあるその棒状のシュークリームは、食感が特徴的でいつでもちょっとした列ができる人気店。

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ちょうど一年くらい前だったか、シュークリーム屋の店員さんに惑わされた。

新宿にあるその棒状のシュークリームは、食感が特徴的でいつでもちょっとした列ができる人気店。並んでまでみんな暇だなあと横目に過ぎようと思ったが、なんだかその行列の細長いのを見ていたら、急に棒状のシュークリームのようなものが無性に食べたいような気がして、気づいたら列に加わっていた。上手くできている。
少し待って自分の注文の番が近づいてくると、シュークリームを作っているガラス張りの作業台が間近に見えてきて、それがシステマチックで見とれてしまった。作業台の上には胸くらいの高さに銀色の直径5センチくらいの細い針のような棒が固定されていて、そこに空っぽの細長いシュー生地をぶっ刺して、棒から出たクリームを注入するということらしい。店員の若い女の子の手際は見事なもので、クールな様子(慣れた感じ)で次々に棒に生地を刺しては外し、刺しては外していく。彼女の手元には大量の棒状シュークリームが量産され、レジ担当の店員さんに提供されていく。
そして、ちょうど僕が注文しようとしたその時、突然華麗なシステムが崩壊した……!

なんと一糸乱れぬ働きをしていた彼女の手がわずかにずれ、シュー生地が棒に刺さらず横にそれてしまい、しかし不幸なことに棒の方は構わず勢いよくカスタードクリームを発射、受け皿のないクリームは彼女のTシャツとエプロンの間にドバッと潜り込んだのだ! ……なんだか無駄に官能的なビートになってしまったが、実際はディズニー的ドタバタコメディのリズム感で、ズルっ!ブリっ!ベタっ!て感じ。まあ擬音にすると結局下品だが、クリームとしてもよもやそんなところにはさまれるとは夢にも思っていない、業務外の僥倖だ。他にも何人かのお客さんが彼女のクリームまみれの胸元に気づいてる様子で、みんな、ありゃ……という表情で、当の彼女がどうするのかに注目している。すると彼女はクールな感じのまま(面倒臭そう)、隣のスタッフにちょっと苦笑して裏へ引っ込んでいってしまったので、僕はがっかりして3つ買おうとしていたシュークリームを2つにした。もしあの時彼女がTシャツのクリームをペロッとやって、「うん、やっぱりうちのクリーム美味しいわ♪」と言ってはけていたら、僕は4つ買っていたのに。

仕事でなにか失敗してしまった時、その対処法に人間性を見られることも多い。だからこそ慎重になりがちなわけだが、あえて失敗した時こそ攻めに転じてさらなる展開を掴み取るのも素敵だなあ、なんて思ったりもした。